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「移転価格による追徴金00億!」っていうような記事が、たま~に日経新聞に掲載されたりしますよね?
新聞に出るのは・・だいぶ後になってからなんですが(笑)

今回は、国際税務でも最重要論点、「移転価格税制」の概要をまとめます。

移転価格の問題は、大企業だけの話ではありませんよ!ベンチャー企業でも、海外に進出する際はちゃんとしておかないと・・えらい目にあいますので!


 

1. 移転価額税制って何?

法人が、国外取引を行う際の価格について規制する制度です。
前回のタックスヘイブン対策税制と趣旨は同じですね。
日本から、税率が安い海外子会社に販売する価額を低く抑えると、利益のほとんどは海外で計上され、「全世界ベースでの税負担」が低くなります。
関係会社間の場合は、取引価格を自由に決めることもできてしまいます。

そこで、親子会社関係間などと取引をする場合、独立企業間価格(支配関係のない独立の第三者間で行われる取引価格)で行われたものとみなすことにより、所得の移転を制限する制度、それが移転価額税制です。

 

(例)

  • 国内親会社仕入100 ⇒ 海外子会社に売却
    (事例1 売却額100・事例2 売却額300)
  • 海外子会社 ⇒ エンドユーザーに500で売却
  • 為替は無視

 

3-1

 

日本親会社が100で仕入れ、海外子会社を通じて500で販売する場合、グループ全体での利益は400となります。
しかし、親子間の取引価格が100か300かの違いにより、親子それぞれの利益が変わってきます。

つまり、親子間の取引価格を調整することにより、意図的な租税回避が可能ですよね。
これに歯止めをかける制度が「移転価格税制」なんです。


 

2. 適用対象(納税義務者)


(1) 納税義務者

日本で法人税の納税義務を負う法人です。個人は含まれませんが、法人規模の要件はありませんので「ベンチャー企業」でも対象となります。
また、「租税回避の意図」は関係ありません。

つまり、大半の企業は租税回避の意図はない・・にもかかわらず「多額の課税」があるので怖い制度なんです。


(2) 適用対象取引

以下に該当する「国外関連取引」です

  • 法人と国外関連者間で行われる棚卸資産の購入販売・役務提供、技術提供等にかかる取引 かつ
  • 対価の額が独立企業間価格に満たないor超える取引


 

3. 独立企業間価格って?

独立企業間価格とは、第三者間において「通常取引されるだろう価格」です。
算定方法は、独立価格比準法、再販売価格基準法、原価基準法(OECDガイドライン)などがあります。

しかし、実際・・この独立企業間価格の算定はかなり難しいですので、十分に検討したうえで「取引価格」を設定しなければなりません。


 

4. 課税額は?

「独立企業間価格」と「実際取引価格」との差額分が課税されます。
例えば、先ほどの事例1で、子会社への実際販売価額が100円、独立企業間価格が300円と算定された場合は、以下となります。
 

実際価額 独立企業間価格 差額 摘要
日本 100 300 200 日本で課税
海外 100 300 △200 海外で還付

 
日本では、差額200につき追加課税が行われます。逆に、既に税金納付済の、海外子会社所在国では、税金を還付してもらうことが可能です。
 
しかし、実際は、自動的に還付が受けられるわけではありません。
現地当局が還付を認めてくれなければ、日本と海外で二重課税という問題が生じます。
 

 

5. 文書化

平成28年度税制改正により、「移転価格文書化資料」の作成が義務付けられました。
この資料は、「税務調査で追徴を受けない根拠」として重要な意味を持つだけでなく、文書作成プロセスの中で、自社にとって「適正な所得配分を検討」できるという意味でも、非常に有用な制度だと思います。
 
このあたりは、また改めて別のところでまとめます。

 

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