「月額変更届」の提出時期は?給料変更のタイミングは?
目次
- 1. 随時改定が必要な場合
- 2. 提出物・提出時期
- 3. 「月額変更届」提出時期・変更するタイミングの具体例
- 4. ご参考 社保 当月徴収の場合の具体例
- 5. 改定金額が適用される期間
- 6. 随時改定の特例
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社会保険料は、毎年7月に提出する「算定基礎届」により改定され、原則として、1年間(9月~翌年8月)金額が固定されます(定時決定)。
ただし、年途中に「報酬に大きな変動」があった場合は、年金事務所に「月額変更届」を提出し、社会保険料の金額の見直しが行われます。
「随時改定」と呼ばれる手続きです。
1. 随時改定が必要な場合
(1) 原則
下記の条件「すべて満たす」場合は、随時改定が必要になります。
- 昇給や降級等により「固定的賃金に変動(※1)」があった場合
- 報酬変動月から3か月間に支給報酬(※2)の平均月額に該当する標準報酬月額に2等級以上の差(※3)が生じた場合
- 上記3か月とも、支払基礎日数が17日(※4)以上(短期間労働者は11日以上)
例えば、非固定的賃金(残業手当等)がいくら増加しても、固定的賃金に変更がなければ、随時改定の必要はありません。
例えば「基本給」だけでは2等級以上変動しないが「残業代等」を含めると2等級以上変動ある場合は該当します。
(固定的賃金とは?)
固定的賃金になる | 固定的賃金にならない |
---|---|
基本給、役職・家族・住宅・勤務地手当、通勤手当、現物給与(住宅、食事など)など、稼働実績によって変わらないもの | 残業・能率・宿日直手当、皆勤・精勤手当など、稼働実績によって変わるもの |
(2) 例外
「随時改定」をしなくてよい例外的なケースは、以下の通りです。
- 固定的賃金は上がったが、非固定的賃金(残業手当等)が減少し、変動後3か月分の報酬平均額に対応する「標準報酬月額」が2等級以上下がった場合。
- 固定的賃金は下がったが、非固定的賃金が増加し、変動後3か月分の報酬の平均額に対応する「標準報酬月額」が2等級以上上がった場合。
(例外まとめ)
固定的賃金 | 非固定的賃金 | 変動後3か月の報酬平均に対応する標準報酬月額 |
---|---|---|
増加 | 減少 | 2等級以上下がった⇒不要 |
減少 | 増加 | 2等級以上上がった⇒不要 |
2. 提出物・提出時期
(1) 提出物
「月額変更届」を年金事務所に提出します。
原則として「添付書類」は特にありません。
(受付大幅遅延など、一定の場合は、賃金台帳等の添付が必要な場合もあります)
(2) 提出時期
「月額変更届」は、2等級以上変動した状態が3か月続いた後に提出します。(あくまで3か月平均を見るため)
⇒ 報酬が2等級以上変動したからといって、すぐに提出するわけではありません。
3. 「月額変更届」提出時期・変更するタイミングの具体例
月額変更届の「提出時期」や「新しい社会保険料」をいつの給与から差し引くのか?は・・結構頭が混乱する論点です。
以下、「社会保険翌月徴収」の会社を前提に、給与支払パターンを2つに分けてまとめます。
(1) 月末締め翌月払い
月額変更届の提出時期 | 5月~7月の報酬支払後 ⇒ 7月31日以降に提出 |
---|---|
改定月(新保険料 反映時期) | 8月分(9月30日年金事務所納付)より反映 |
改定後保険料を差引く給与明細 | 8月分(9月30日支払給与)より差引 |
(2) 月末締め当月払い
月額変更届の提出時期 | 4月~6月の報酬支払後 ⇒ 6月30日以降に提出 |
---|---|
改定月(新保険料 反映時期) | 7月分(8月31日年金事務所納付)より反映 |
改定後保険料を差引く給与明細 | 8月分(8月31日支払給与)より差引 |
4. ご参考 社保 当月徴収の場合の具体例
(1) 月末締め翌月末日払い
月額変更届の提出時期 | 5月~7月の報酬支払後 ⇒ 7月31日以降に提出 |
---|---|
改定月(新保険料 反映時期) | 8月分(9月30日年金事務所納付)より反映 |
改定後保険料を差引く給与明細 | 7月分(8月31日支払給与)より差引 |
(2) 月末締め当月末日払い
月額変更届の提出時期 | 4月~6月の報酬支払後 ⇒ 6月30日以降に提出 |
---|---|
改定月(新保険料 反映時期) | 7月分(8月31日年金事務所納付)より反映 |
改定後保険料を差引く給与明細 | 7月分(7月31日支払給与)より差引 |
5. 改定金額が適用される期間
改定後の「標準報酬月額」は、以下の期限まで適用されます。
改定月 | 適用される期限 |
---|---|
6月以前の場合 | その年の8月まで適用 |
7月以降の場合 | 翌年の8月まで適用 |
6. 随時改定の特例
毎年「一定期間」だけ報酬が高い方を配慮する趣旨で、2018年10月より、「年間平均報酬額による随時改定」が行えるようになりました。
(定時決定のケースでは、従来から同様の制度がありました)
(特例の要件)
下記の条件「すべて満たす」必要があります。
- 「通常の随時改定(変動月~3ヵ月平均給与)で算出した標準報酬月額」と年間平均額から算出した標準報酬月額」に2等級以上の差がある
- 上記の差が、業務の性質上、例年発生することが見込まれる
- 「現在の標準報酬月額」と「年間平均で算出した標準報酬月額」の間に1等級以上の差がある
- 被保険者が同意して、事業主が申し立て
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