最近は、年金受給者でもパート収入を得ている方も多いかもしれません。また、経営者の方などは、会社から給料をもらいながら、年金受給される方もおられると思います。
今回は、例えば、お父様や奥様が「年金受給者」で、別途「給与所得」がある場合、扶養や配偶者控除が可能な「パート収入等の限度額」につきお伝えします。

また、関連論点で、年金収入と給与収入がある本人に認められる「所得金額調整控除」の内容(令和2年改正)や、年金受給者が給与収入をもらう場合に年金額が調整されるケースをご紹介します。

 

1. 扶養控除・配偶者控除の合計所得金額とは?

(1) 扶養控除・配偶者控除とは?

「合計所得金額が48万円以下」の扶養親族・配偶者がいれば、本人に扶養控除(38万円)、配偶者控除(最大38万円)が認められます
(合計所得金額133万円未満までは配偶者特別控除あり)。
 

(2) 合計所得金額とは?

合計所得金額とは、総合課税所得+分離課税所得の金額(繰越損失控除前)です。誤解を恐れずいうと・・イメージは、公的年金等控除後、所得控除前の金額です。
つまり・・「合計所得金額48万円」とは、年金収入等から公的年金等控除を差し引いた後の金額が48万円以下であれば、扶養控除が可能ということになります。
 

(3) 年金のみ・給与のみの場合の「合計所得金額48万円」に収まる収入換算額

年金や給与には、各々の金額に応じて最初から認められる、「公的年金控除」「給与所得控除」という経費があります。年金のみ・給与のみの場合、扶養控除や配偶者控除が可能な「合計所得48万円」以下に収まる「収入」換算額は以下の通りです。
 

種類 年齢 最低限認められる
公的年金控除・給与所得控除
合計所得48万円以下に
収まる収入換算額
年金収入のみ 65歳未満 60万円 108万円
65歳以上 110万円 158万円
給与収入のみ 年齢不問 55万円 103万円

 

2. 年金受給者が扶養の範囲に収まるパート収入の限度額は?

パート収入がある「年金受給者」を扶養にできる「パート収入上限額」を試算してみます。

(1) 例題

  • 父(64歳)の公的年金の年間収入 80万円
  • 父は、上記の年金のほか、パートで給与所得がある

 

65歳未満の場合・・・・
(年金収入-60万円)+(給与収入-55万円)=48万円以下

に収まればよいということになります。

以下、年金収入をN、給与収入をKとします。
 
上記例の場合は・・
(80万円 -60 万円)+(K - 55万円)≦ 48万円
⇒Kを求めます。式から逆算して・・K(給与収入)は83万円となります。
 

(2) 結論

上記式を展開すると、以下の結論が導けます。

① 65歳未満の場合

(N – 60万円) + (K - 55万円) ≦ 48万円

⇒ N+K = 163万円に収まれば合計所得金額48万円以下となる。
 

② 65歳以上の場合

(N – 110万円) +( K - 55万円) ≦ 48万円

⇒  N +K= 213万円に収まれば合計所得金額48万円以下となる。
 
Nの箇所に、ご自身の年間年金受取額を当てはめれば、扶養の範囲内で収まるKの金額(給与収入」が試算できます
 

3. 所得金額調整控除

(1) 所得金額調整控除とは?

令和2年の改正により、給与所得控除、公的年金等の控除がそれぞれ10万円(合計20万円)引き下がり、一方で、基礎控除額が10万円引き上げられました。その関係で、給与所得、公的年金等の両方の所得を有する方は、10万円所得金額が増えるため、最大10万円の所得控除が新たに認められることになりました。
「所得金額調整控除」の制度です。
 

(2) 所得金額調整控除の種類

年収850万超の方が、23歳未満の扶養親族を有する場合、あるいは本人、
同一生計配偶者、扶養親族で特別障害者を有する場合
年末調整可能
給与所得と年金所得の両方を有する場合 確定申告のみ
上記の両方該当 同上

 
上記のうち、今回の論点は、②となります。
 

(3) 対象者は?

①「給与所得控除後の給与所得」②「公的年金等控除後の公的年金等に係る雑所得」の合計額が10万円を超える方が対象となります。
「公的年金以外の雑所得」は対象ではありませんので、ご留意ください。
 

(4) 調整額(=控除額)

 
調整額 = (①給与所得控除後の給与 + ②公的年金等控除後の公的年金等雑所得) ‐ 10万円

①②それぞれ10万円超の場合は、それぞれ10万円として計算します。
したがって、①②どちらかゼロの場合は、控除額はゼロとなります。
最大控除額は、10万円となります。
 

(5) 具体例

① ケース1

給与収入500万円 公的年金等収入50万円  年齢62歳

 

●給与所得控除後の給与額

500万円-(500万円×20%+44万円)=356万円

●公的年金等控除後の公的年金等雑所得

50万円-60万円=0円  

●所得金額調整控除額

(10万円 +0 円)-10万円=0円

給与、年金とも、各々上限は10万となります。ケース1は、給与所得は10万円以上ありますが、公的年金等の所得額は0円となるため、結果、控除額は0円になります。
 

② ケース2

給与収入 500万円 公的年金等収入200万円  年齢67歳

 

●給与所得控除後の給与額

ケース1と同様 356万円

●公的年金等控除後の公的年金等雑所得

200万円-110万円=90万円  

●所得金額調整控除額

(10万円+10万円)-10万円=10万円

ケース2は、給与・年金どちらも10万超のため、結果10万円の控除が可能です。
 

(6) 確定申告書の記載方法

第1表 収入金額「給与」の欄の右に「区分」という箇所が新設されています。こちらに下記に対応する番号を入力します。

区分 内容
「子ども・特別障害者等を有する者
「給与所得と年金所得の双方を有する者
上記の両方に該当

 

なお、「所得金額調整控除」の金額は、「所得控除等」の欄には出てきません、「給与所得の金額」の欄より直接控除されます。上記ケース2の場合、下記の記載例となります。
給与所得の金額は、346万円(356万円-10万円)を直接入力します。
 

 

4. パート収入をもらうと「年金受取額」が調整されるケース

年金受給者が、他に給与収入がある場合、一定金額を超えると年金が支給調整されます(在職老齢年金)。調整対象となるのは、60歳以降、厚生年金保険に加入していて、給与収入月額と年金月額の合計額が一定額を超えた場合です。
 

(1) 60歳~64歳の場合

60~64歳の場合、給与+年金月額が28万円を超えると、以下の金額が支給停止されます。
全額支給停止になった場合は、加給年金額も同時に支給停止。

年金月額 給与月額相当額 支給停止月額 計算式
28万円以下 47万円以下 {(給与月額相当額+年金月額)‐28万円}×1/2
47万円超 {(47万円+年金月額)-28万円}×1/2+(給与月額相当額-47万円)
28万円超 47万円以下 給与月額相当額 × 1/2
47万円超 (47万円×1/2)+(給与月額相当額-47万円)

●給与月額相当額=給与収入(総報酬月額相当額)=4~6の給与平均+直近1年の賞与÷12
 
なお、60歳~64歳の方で、高年齢雇用継続給付(賃金額が60歳到達時に75%未満となった方)を受ける場合は、上記のほか、さらに年金の一部が停止される金額があります。
 

(2) 65歳以後の場合

65歳以後は、給与+年金月額が47万円を超えると、以下の金額が支給停止されます。全額支給停止になった場合は、加給年金額も同時に支給停止。
 
{(総報酬月額相当額 + 年金月額)-47万円 }× 1/2
 

(3) 例

  •  老齢厚生年金月額9万円
  •  総報酬月額28万円

 
年金月額が28万円以下、総報酬月額も47万円以下のため、支給停止額は
{(28万円+9万円)-28万円 }× 1/2 = 45,000円
 

5. 参照URL

(働きながら年金を受けるとき)

http://www.sri-kikin-kenpo.or.jp/kikin/02public/0204b.html

(所得金額調整控除)

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1411.htm

 6.Youtube

 

YouTubeで分かる「年金受給者を扶養控除等にできる「パート収入」の限度額」