No249【具体例付】欠勤控除の計算方法は?手当の取扱いや給与明細での記載場所は?
従業員には、法律上、一定日数の「有給休暇」が認められています。しかしながら、有給休暇残高がゼロにもかかわらず、お休みをするケースもあるかもしれません。
こういった場合は、「欠勤扱い」となり、その月の給料から一定額が控除されます。
「欠勤控除」と呼ばれます。
今回は、厚生労働省の「就業規則のモデルケース」をもとに、「欠勤控除」の一般的な計算方法につき解説します。
目次
1. 欠勤控除は就業規則に記載が必要
欠勤控除とは、欠勤した部分に対応する賃金を、給与から差し引く制度です。終日欠勤した場合だけではなく、遅刻や早退の場合も、欠勤控除の対象となります。
欠勤控除に関する「法令上の規定」は特にありません。しかし、従業員にとっては重要な事項となりますので、就業規則に「欠勤控除の計算方法」を定める必要があります。厚生労働省の「モデル就業規則」が参考になります。
2. 欠勤控除の計算方法
一般的な欠勤控除の算定式は、以下となります。
基本給等 ÷月の所定労働日数(or所定労働時間)×欠勤日数(or欠勤時間数)
- 端数処理は、切り捨て処理します(労働者有利)。
- 公共交通機関の乱れによる遅刻等については、欠勤扱いにしない会社もあります。このあたりも、就業規則で定めておきます。
- 遅刻や早退の場合は、月の所定労働時間で算定した1時間あたりの給与で算定します。実務上は、10分単位、15分単位で計算している企業も多いようです。端数処理に関しては、切り捨て処理します(労働者有利)。
- 所得税上、欠勤控除額は、原則非課税となります。
(1) 基本給とは?手当は含む?
「欠勤控除の計算式」における「基本給等」の範囲につき、法令上の規定はありません。会社によって「手当」を含める場合もありますので、範囲を就業規則で定めます。
手当には、①労働・業務に直接関連する手当(通勤、資格、営業手当等)②直接労働に関連しない手当(家族・扶養・住宅手当等)の2種類があります。一般的には、手当のうち、①のみを「欠勤控除の計算対象」とするケースが多いです。
ただし、通勤手当を「欠勤控除の対象」とする場合、通勤手当が非課税となる関係で、単体で「欠勤控除額を算定」する必要がある点、注意が必要です。
(2) 月の所定労働日数(月所定労働時間)とは?
一般的には、「月の所定労働日数」は、月ごとの変動をなくすため、以下の式で算定する企業が多いです。
月の所定労働日数 = 年間所定労働日数 ÷ 12ヶ月
「月の所定労働日数(月所定労働時間)」は、欠勤控除のほか、残業計算や休日出勤手当などを計算する際にも利用します。
(3) 年間所定労働日数とは?
年間所定労働日数は、就業規則で定める必要があります。一般的には以下の式で算定します。
年間所定労働日数 = 1年間の暦日数(365日or 366日)- 年間休日日数(※)
(※)年間休日日数とは
- 就業規則で定めた休日となります。一般的には、土日祝日+夏季休暇+年末年始休暇等の合計とする会社が多いです。土日祝は、年によって日数が異なりますので、年間休日日数は、毎年変動します。
- 「年間休日日数」には、法定休暇(有給休暇や育児休暇等)、法定外休暇(リフレッシュ休暇や慶弔休暇)は含まれません。つまり、有給休暇等は所定労働日数に含まれるということになります。
3. 役員報酬やアルバイトの場合は?
(1) 役員報酬は?
役員は、雇用ではなく委任関係にありますので、欠勤控除の対象にはなりません。なお、役員の場合は、欠勤に関わらず、別途、取締役会で役員報酬の「減額」を行います。
(2) アルバイト等は?
アルバイト等で日給制、時給制の場合は、実際その月に働いた日数や時間に応じて給与を支払いますので、欠勤控除という概念はありません。
4. 欠勤が多い場合や休日出勤等との相殺の取扱い
(1) 欠勤控除が多い場合の取扱い
欠勤日数が多い場合、「欠勤分を控除」するのではなく、出勤した日数分だけ日割りで給与を支給するケースもあります。一般的に、就業規則に、「〇日以上休んだ場合は、出勤日数に応じた日割り計算額を支給する」旨を記載する場合が多いです。
(2) 休日出勤等と相殺は?
会社の判断で、勝手に、欠勤控除と休日出勤等を相殺することはできません。労働者1人1人と合意している場合に限り、相殺が可能です。ただし、相殺する場合でも、所定の「休日出勤手当」は支給する必要があります。
5. 給与明細への記載
「欠勤控除」は、給与明細上、「控除項目」の欄ではなく、「支給項目」の下に「欠勤控除」等の名称で記載します(勤怠項目の欄に欠勤日数等を記載)。
なお、給与明細の「控除項目」に記載する内容は、社会保険、雇用保険料、所得税などに限定されています。
基本給 | 250,000 |
---|---|
営業手当 | 30,000 |
欠勤控除 | △42,000 |
課税額合計 | 238,000 |
6. 欠勤控除額算定の具体例
・年間所定労働日数 =年間の暦日数 - 年間休日日数
(「月の所定労働日数」は、年間所定労働日数÷12で算定)
・年間休日は、土日祝日+ 夏季休暇3日 + 年末年始休暇4日。
・欠勤控除の計算対象は、基本給+営業手当とする。
● 従業員Aは、2022年5月に3日間欠勤した。Aの5月の給料は、基本給は25万円、営業手当は3万円とする(その他の手当はない)。
● Aの5月給与から控除する「欠勤控除額」は?
① 年間休日
2022年の土日祝日120日 + 夏季休暇3日+ 年末年始4日= 127日
② 2022年の年間所定労働日数
365日 - 127日 = 238日
③ 月の所定労働日数
238日 ÷ 12ヶ月 = 19.833… ⇒切り上げ20日(労働者有利)
④ 欠勤控除計算上の月給与額
基本給250,000円+営業手当30,000円=280,000円
⑤ 欠勤控除額
280,000円÷20日=14,000円(小数点以下が生じた場合は切り捨て、同上)
14,000円×3日=42,000円
7. 参照URL
厚生労働省 モデル就業規則
8. Youtube
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